

カビはダニと並び、健康的な生活を脅かすものとして忌み嫌われています。しかし、カビについていえば、発酵で活躍する有用なカビがあり、日本酒、米酢、黒 酢、醤油、味噌、ペニシリンなど、私たちの生活にきってもきれないものであることも確かです。カビやダニは、人間が生活するところに必ず存在しており、関 係を断ち切ることはできません。要は、どのようにつきあっていくかがポイントとなります。
(1)カビとはそもそも何か?
カビは、「酵母」「細菌」などと並び、微生物と言われ、地球上のあらゆるところに生息しています。微生物とは「肉眼では見えない」と定義されており、カビ もその胞子は3~6ミクロンと小さく肉眼で確認することはできません。私たちがパンや餅についたカビを見ることができるのは、この胞子から糸状の菌糸が伸 び作られた菌糸体があるからです。カビの繁殖条件は、温度、湿度、空気(酸素)、養分の4つです。まず温度は、発生しやすいのは20~30°Cで、特に 25°C前後で活発化します。但し36°C以上ではほとんど発生が止まります。逆に低温には強く、冷蔵庫内でも発生します。次に湿度ですが、空気中の水分 が多いほど発生し、相対湿度80%以上では多くのカビが発生します。またカビは菌糸を素材内部に伸ばすための栄養素として酸素を必要とします。従って、 湿った空気はカビにとって最も発生しやすい条件となります。
さらにカビの養分ですが、光合成はできないので、有機物質を必要とします。この有機物質は、石膏ボード、木質建材、接着剤、ウレタンホーム、ビニール壁 紙、タイル目地、シャワーカーテン、畳、漆喰、モルタルなど、現代住宅の建材や各種材料に含まれており、この点で、私たちの住んでいる家はカビの繁殖条件 の中で暮らしているということができます。また、カビとダニは発生条件がほとんど同じであり、しかもカビがダニの栄養素でもあるため、カビのあるところに はダニもいるということになります。

(2)カビはどんな害があるのか
カビはこの地球上でほぼ7万種位存在すると言われています。その中で、発酵系のカビの中には私たちの生活に有益なものも多いのですが、有害となるものも多い。以下どのような有害性があるかを見ていきましょう。
まず、人体や動物にとっての病原となるものとしては、真菌感染症、水虫やカンジタなど表在性心筋症、喘息や鼻炎などのアレルギー、真菌中毒症など、次には 食物、加工食品、油脂などの腐敗・変質、さらに各種工業生産物の劣化、美術工芸品の損失、そして全般的な環境汚染などがあり、私たちの生命そのものへの脅 威にもなりうることは確かです。
(3)カビが発生しない家づくりのポイント
以下3つの観点から見ていくことができます。
ひとつは、家の中から水蒸気を減らし、湿気を追い出すこと
2番目は、家の中でカビの発生しやすい場所のカビ対策
3番目は季節による対策です。

まず家の中から水蒸気を減らす方法です。そもそも水蒸気とは、一般的には湿気と言われていますが、これは物質の状態では気体であり、どこにでももぐりこん でいきます。そして、ガラスや押し入れなどに結露を発生させ、ここがカビの繁殖場所となります。家の水蒸気発生源としては、石油ストーブ、人体、炊事、入 浴等があり、人間も大きな水蒸気源になっています。つまり、家というのはそもそも水蒸気に満ちているということになります。こうした家から水蒸気を減らす 方法としては、まず夏は高温多湿で外気中の水蒸気分が多いため、エアコンはドライや除湿にして、外気を中に取り入れないことが肝心です。
一方冬は、外気の水蒸気分は少なく、家の中の水蒸気分が多いため、換気により、家の中の水蒸気を排出します。また暖房器具はできれば石油ストーブのような 燃焼系を避け床暖房などにすると良いでしょう。燃焼系の場合には、換気をこまめに行い、室内の水蒸気分を排出することが重要です。また、洗濯物を室内で乾 かす人がいますが、これも室内の水蒸気を増やすことになります。換気扇などをまわしながら行います。さらに、観葉植物や水槽を置く方も多いのですが、リビ ングなどを避け、玄関等換気の良い場所においてください。

次には、家の中でカビの発生しやすい場所のお手入れです。
まず発生しやすい場所は、浴室、洗面所、台所、下駄箱、押し入れ、ジュウタン、アルミサッシ窓などとなっています。それぞれ対策としては以下のようになります。
・浴室…入浴後夜間中換気扇を回す、昼間は窓を開放する。浴槽水はためない。浴室の扉は開放しない。
・洗面所…洗面所などの水まわりは排水管があるため、特に湿気のたまりやすい場所です。濡れた場所はこまめに拭き取り、換気する、また、洗面台の下の扉や引き出しは閉め切ったままにせず、時々開けて換気を心がける。
・台所…水蒸気が拡散しないよう、調理時、皿洗い時には換気扇を回す。使用後もしばらく回しておく。
・下駄箱…無水エタノールの散布が効果的
・押し入れ…床のスノコ通風を良くする。夜間ふすまを開けておく、目いっぱい収納しない
・ジュウタン…はがせるものであれば、まめに天気の良い日に干す。粘着ローラーでゴミをとる。ジュウタンの上に「じかにものを置かない」。3~4年に一度、カーペットクリーニングをする。
・アルミサッシ窓…雨戸や複層ガラスで、ガラス内側面の温度低下をふせぐ。結露はすぐに拭き取る、暖房器具を窓側に置く

次は、3番目の季節の問題です。
日本は4季の国ではなく、5季の国である。それは梅雨季があるからというぐらい、梅雨時にはいろいろな問題が発生します。 その中でも多いのがやはりカビ問題です。梅雨時は、外気が湿っていますから、換気にも注意しなければなりません。基本的に梅雨時のカビ対策は、1番麺、2 番目の対策をこまめに行うことが大切です。